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2007年4月13日 (金)

フリーターに関する議論の問題点

 近年急増したフリーター・ニートは社会問題になっている。
特に社会学者の山田昌弘と経済学者の玄田有史はメディア露出度が高い。
本当は山田昌弘(誰かさんに名前が似すぎているが)を批判しようと思ったのだが、
低レベルな議論を相手にするのは生産性が低いし、
それが社会学を代表しているわけでもないかもしれない。
というわけで、色々読んだ本を見ていきながら感想を書いておく。

◆フリーターの増加は本当に社会問題なのか?

 多くの論者はこれを自明として扱っている。
しかし、気楽なフリーター生活をしていて
パラサイト・シングルを楽しんでいるだけかもしれない。
現在の所得が低くても、親の援助や遺産をあてにしているのかもしれない。

 これに対する反論はある。
例えば小杉礼子編『自由の代償』や小林大祐『フリーターの労働条件と生活』
(太郎丸編『フリーターとニートの社会学』5章)は
フリーターを自己認識から「夢追い型」「やむを得ず型」「なんとなく型」などに分類し、
正社員になりたいけれどなれない「やむを得ず型」がある程度いることを示した。

 しかし、これは例の山田昌弘に批判されている。『希望格差社会』5章で

私は、このタイプ分類は、あまり意味がなく、フリーターが、
将来の希望をもてる定職に就いていないという事実が重要ではないかと思っている

いつか、自分の理想的な仕事や立場に就けるはず、と思いながら
単純労働者である自分の姿を心理的に正当化するのが、
フリーターの抱く夢の本質ではないだろうか。

 確かにフリーターが深刻な問題だとする立場からすれば、こうなるだろう。
しかし、この「フリーターの自己認識に基づく分類は有効ではない」という批判は
そっくりそのまま真逆の立場からも用いられる。
「やむを得ず型」もそう言っているだけで適切な努力を怠っており、
それが嫌だから正社員になる機会がないと自己正当化しているだけかも知れない。

 結局、議論はもとの地点に戻ってきてしまった。
若者の労働意識が変わって彼らがサボっているだけなのか、
少子化で親祖父母の支援・遺産が期待できるのか、
経済状況が悪化して本当に正社員として働きたいのに働けないのか。

 フリーターというのはある側面では経済問題である。
しかし社会学者はその理解が甘いので、どうも分析に適当感が漂う。
また彼らにインセンティブという観点が欠如しがちなのも問題だ。

◆どの程度の問題なのか?

 玄田有史が主張するように、フリーターであることは履歴効果を持つかもしれない。
30過ぎてフリーターの人はいまさら正社員になれないし、
そういう人は一生生産性が低いままの可能性が高い。
中高年が職を独占して若い世代の道を閉ざすのは問題かもしれない。
しかし、これも「どの程度か」には答えていない。

◆どういった性質の問題なのか?原因は何か?

 結局のところ、フリーターの増加に関してほとんど何も分かってはいない。
若者の労働意識が変わったのか、経済環境が良いから働かないのか、
それとも経済環境が悪いから働けないのか。

 経済環境が悪いということにも、色んな状況がある。
たまたま景気が悪い時に就職時期を迎えた世代というだけなのか。
それなら大竹文雄『日本の不平等』の8章がそういう効果を実証している。
しかし、ニューエコノミーがどうたらはよく分からない。

 あと忘れられがちな点だが、フリーターは女性に多い。
女性の有業率が30代前半に低下するのは有名で、
これはおそらく出産と子育てが原因だと思われる。
結局、まともに就職しても辞める・辞めざるをえない人はいるわけで、
だったら20代をレジャーと男探しに費やすようになり、
親がそれを支えているだけなのかもしれない。

 『希望格差社会』の7章は教育の問題を論じていて、
若者が適切な期待感を持てないことを問題視している。
要するに自己肥大を起こしているというわけだ。
これなら経済問題でもなんでもない。

 問題の原因が分からないと対策の立てようもない。
しかし、問題だけは確実に進行している、と思われている。
どうしたもんでしょうね。

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