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2007年3月 1日 (木)

未来世代への倫理

結婚し2人以上の子どもを持ちたいという(若い人の)
極めて健全な希望にフィットする政策を考えていかないといけない
                     -柳沢厚生労働大臣

◆「少子化」の死角

 私はこの発言内容自体は問題はないと思っている。
もし発言者に知性と覚悟が備わっていれば、であるが。
柳沢にはどちらもあるとは思えないし、
しかも厚生労働大臣が言うのはいかにも拙い。

 それでは彼はどう言えばよかったのか。
これには以下のような模範解答がある。

「子供を産みたい多くの人が実際に産めるための政策が必要だ」

こう言えば誰も問題にしなかっただろう。

 しかし、これは所詮「模範解答」に過ぎない。
少子化が問題視されているため気づかれないが、
冷静に考えるとこれはかなり荒い解答である。

◆子供

 まず問題なのはその他の要望との関係だ。
人々が望むものは子供だけではない。
治安、環境、消費水準(所得)など色々ある。
子供はこれらと同列に扱われる問題なのだろうか。
それとも別の質を持つ問題なのだろうか。

 少子化が問題視される現実的な背景は、
高齢化社会を迎えて社会負担率が上がっていることだろう。
しかしこれは年金が賦課方式なことが問題なだけだ。
後は頭の古い人が「国力」みたいなことを言うだろうが、
それもどうでもいいのでここでは無視する。

 こう考えると、少子化は特別な問題ではない。
それは失業や治安悪化などと特別変わる点はない。

もっといい服を着たいのにユニクロ。
もっと美味しいものが食べたいのに吉牛。
もっと広い家に住みたいのにワンルーム。
もっと子供が欲しいのに一人っ子。

 しかし、そうではない、と考える人も多いだろう。
そしてそれは実際「正しい」と思う。
だがそういった感情が上手く表現されることはない。
せいぜい「人は子供を産んで育てて一人前」といった
古臭い価値観に則るぐらいしか手がない。

◆限界

 それは何故なのか。
やや大げさに言えば、我々が依拠している近代思想が
この問題に対して全く無力だからである。

 例えば社会契約論を考えてみればいい。
そこで想定されているのは全員成人である。
しかし現実の人間はまず子供として生まれてくるし、
いずれ死んでいかなければならない。

 大人になるために成長し、
大人になったら子供を作って教育し、
子供に見取られながら死んでいく。
これらは人生においてかなりのウェイトを占めるはずだが、
なぜかこういった側面が無視されてきた(*)

(*)近代思想の1つのカリカチュアである
経済学の一般均衡理論は無限期間生きる人を想定しているのは面白い。

◆未来世代

 子供がその他の欲求の対象と根本的に違う点がある。
それは彼ら自身がその欲求を持つということである。
そして、まだ生まれていない彼らの欲求に答えることも
広い意味での政治には求められている。

 上で書いた模範解答に欠如しているのはこの視点である。
極端な話、子供は生まれてくることを望まないかもしれない。
生まれてきたとしても良い環境と悪い環境があるだろう。
子供を産む人を社会が選び始めると
優生学的になってきていかにも気持ち悪い。
しかしレビットなんかの指摘を待つまでもなく、
生まれながらに不幸せな人生を送る可能性の高い子供もいる。

 ここまで大げさに考えなくても
少子化が望ましいと考える根拠もある。
経済学のOLGモデルで考えれば、
少子化になった方が未来世代にとっては
資産が多いだけ生活は豊かになる。
分かりやすくいえば、一人っ子が2回続けば
孫は祖父母4人を独占できるため
お年玉でがっぽり儲けることができる。

 もちろんこれは未来世代のことであって、
現役世代にとってみれば少子化は望ましくない。
つまり少子化は今生きている人たちにとって問題なのであって、
次に生まれてくる子供たちにとっては問題ではないかもしれない(**)

 逆の例としてアフリカの様な国を考えてみよう。
そこではむしろ子供の数を減らした方が
次の世代の一人一人の生活水準は上がるかもしれない。

 だったら子供の数を制限するのは望ましいことなのか。
しかし本来生まれてくるはずだった子供のことはどう考えるのか。
現実に生まれてこなかったのだから無視していいのだろうか。
本来なら生まれたはずの子供を生まれなくするのは、
とんでもない人権侵害ではないのだろうか。

 こういった問題について私たちは解答を持ち合わせていない。
先ほどのOLGモデルで考えてみても、
生まれていない人間の効用をどう評価するかに定説はない。
これは今現在の我々にはどうしようもない問題なのだ。

(**)もちろん生きている世代全員の利害は一致しない

◆妥協案と課題

 現実の対応策は以下のようなものだろう。
とりあえず、まだ生まれてきていない人間のことは考えない。
しかし一度生をうければ人権を保障する(***)
子供の数に関しては、今生きている世代の効用から判断する。
誰が子供を産むかは、表向きは介入しない。

 もちろん、これが「善い」判断なのかは分からない。
また別の問題として教育があるが、
これも非常に難しい問題だ。

 この本質的な問題をどうするかは、
今後の大きな課題だと思う。
しかしそれは解決可能なのだろうか。
そして、この問題に取り組むことは
はたして未来世代にとって望ましいことなのだろうか。

(***)どの時点で「生をうけた」かには解釈の余地がある。

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